山口 正司
浩子さん一家一時ごろ来る。駿ちゃんとミーちゃんは風邪をひいている。駿ちゃんは来るなり
「しゅんしゅんビルディングまだある? やりたいよ。」
と言うなりマックの前に飛んで行った。
「ロビーを作らないと上には建てられないのか。マーおじちゃん他のも教えて。」
ミーちゃんも後ろを追いかける。
「赤ちゃんのおむつ替えたいの」
と言うミーちゃんは、浩子さんから
「ダメヨダメダメ。」
四月からミーちゃんは幼稚園、駿ちゃんは小学校で、今日の浩子さんには大分ゆとりがある。
「四月になったら何年かぶりで少しは自分の時間が持てる。」
チャコちゃんは浩子さんといるのがやっぱり一番ほっとする。
おっぱいをあげ始めるとミーちゃんはじっと見つめ、駿ちゃんは陰に隠れてしまった。
四時ごろ帰宅。五時頃家に戻ったという電話。
航平はいまのところ極めて規則正しい優等生。
お義父さんから明日恵比寿のクリニックに行った帰りに訪問したいという電話あり。
航平のお風呂は毎日担当している。チャコちゃんは今日も代りにやろうかと言うけれど自分の楽しみで奪われたくないような気がする。でもかなり大事な所でチャコちゃんは手伝ってくれている。
ベビーバスを台所の調理台の上に置いてお湯を入れる。洗面器に上がり湯をつくる。テーブルの上でおむつをはずされ裸にされた航平を抱く。これは緊張する。しめった手で抱かれるのを泣いて手を動かすし耳たぶをおさえようとすることで滑りそうなのだ。
裸にされて泣いているのを、
「お風呂が好きな航平君」
と歌いながらゆっくりと入れる。お湯に体が入ると直ぐに泣きやむ。昨日から手に布を掛けてみるがこれは効果がある。それまでよりも一層泣かない。目に涙を残しながらもこれは気持ちがいいという顔になっている。ガーゼで顔を拭う。このとき一回拭うたびにガーゼを洗わないとチャコちゃんはすぐに洗って洗ってと言う。チャコちゃんは習ったのと全く同じでないと気がすまない。ガーゼの別の所で拭けばいいと思う。
頭を洗うとき洗剤が目に入らないようにする。頭を流し終えた時毎回試練が来る。腰が痛くなって目の前がくらくらっとする。それが、毎日同じこの瞬間にある。だからチャコちゃんは代ろうかと言う。体を洗い始めると痛みは徐々になくなる。
そして航平をうつぶせにして右手で航平の左手と首をひっかけて背中を洗う。そのときよく僕の石鹸の付いた手をなめているので注意する。それから首がしまっていないか、口が水の中に入っていないかも注意する。航平の背中はけむくじゃらで長島監督のよう だ。
背中とおしりをよく洗ってもう一度仰向けにすると航平は最高にご機嫌になっている。お湯から出して上がり湯を掛けるとおしまい。出した瞬間また火のように泣くのでお風呂が好きなんだと解釈している。
テーブルの上のタオルの上でああ面白かったと言われて今日の一大イベントの入浴が終わる。その後おっぱいを飲むが、飲みながらうんちをしてもう一度坐浴をしたことが9回の入浴の内3回あった。
お義父さん一時から四時まで訪問。
マタニティブルーのきざしあり。
子育ても一巡して航平の予測は大体できる。不安でたまらなかったのに今は人に教えても少しは通じる。しかし、疲れが出て来た。
チャコちゃんはまだまだ張り切っている。しかし僕の方があやしいのである。疲れている。僕は真面目な所もあるがパワーがない。それと先に憂鬱状態になって、チャコちゃんを牽制しようという浅はかなねらいもある。
これからこの生活がずっと続くのかと思うと実にマタニティブルーには誰でもなってしかるべきものだと思う。ここで思い起こすのは今日一日をやっていこうということ。ゆっくり行こう。最低の産業人でよい。
今日の疲れの原因は布団干しにある。航平の鼻が寝る場所に行くとおかしくなるので晴れたこともあって急きょ家族全員の布団を僕が上げて干した。もともと僕もアレルギーなので埃をかぶることをすると実にエネルギーがなくなってしまう。
夕飯はマルエツが休みだったので吉野屋の牛どんを二つ買ってきてチャコちゃんと食べた。
やはり航平の鼻が夜詰まるので昼間と同じ場所で寝かすため僕とチャコちゃんが航平の横でコンクリートに直に敷いてあるじゅうたんの上に寝た。
食卓テーブルを横に寄せてガスエアコンの前に足を置いてチャコちゃんは修学旅行みたいだと喜んでいた。しかし、修学旅行は三泊四日だ。
ずっとこれでいくのか。
干しやすいと言いつつ今日も布団を干してコンクリートの上のじゅうたんの上に今布団を敷いた。
今の所航平の鼻は改善せず、僕の鼻もおかしい。
今日も布団干し。航平の鼻は快方に向かう。
まさじ発熱昼38度。夜になって37度4分。体はまだ動く。鼻の具合はいい。ウィークエンドで休みが嬉しい。チャコちゃんは元気。
航平は少し太ってきた。あごのあたりがふっくらしてきた。
今日僕はベッドで一人で寝ることになりそう。
今日も布団干し。僕の熱は平熱に戻った。
じゅうたんの下をあけてみるとこの間の雨の雨漏りがあってじゅうたんが濡れてかびがはえている。雨漏りは直す必要があるが、なかなか直らない。地震のためにコンクリートに亀裂が入ることが原因かもしれない。
法規制で斜線制限を受ける部分がいけない。法規制に腹が立つのか、あるいは法規制ぎりぎりに建てた自分がいけないのか、いずれにしても雨漏りは家族の不健康の元になっている。
じゅうたんのかびを掃除機でとって、アルコールをかける。
航平は絶好調で順調。はなくそはまだ奥の方でたまっていてズコズコいう時もある。チャコちゃんは三週間で床上げということになりマルエツに買い物に出かけた。二か月ぶりで歩く近所の道に興奮していた。夕食も作った。
今までも相当量の仕事をしてきているが夕食からテーブルの下座と上座の位置を替えてくれた。
夜おばあちゃんから風邪をひいてなかなかいけなくて悪いねと電話があった。
日曜日。天気もまあまあ。子育ても一服。チャコちゃんはソフトランディング。
航平のはなくそと自分の鼻が不安で空気清浄器のフィルターを買いに渋谷に行く。このフィルターが3か月程で使えなくなる。その度渋谷で買うがビックカメラ でも高い。
あまり高いので最近出ているイオン式空気清浄器を買おうかと思うことが度々ある。しかし今使っている空気清浄器もイオン発生効果があって機能の点で今以上の清浄効果があるようにも思わない。結局今日も高いフィルターを買って来た。
その途中でJAVA Mac版の本を買って、葉書大のカードを買う。帰りにカルビ焼肉弁当を二つ新玉川線入口の東急名店街で買って帰る。
今チャコちゃんはシャワーを使い、僕は航平の頭にインターホンの受話器を置いて鼻息をモニターしながらこれを書く。
沢田先生から明日来るという電話。内山家は今日晩ご飯後に来ようかなとも思うがまたにするという安否の伺いあり。
沢田先生2時半頃訪問。
親戚や友人、今日は沢田先生も航平は顔がかわいいと言う。顔がいいと言われるのは親として素直に嬉しい。だけども随分たくさんの親戚や友人に航平を見せるとだんだん顔がいいだけでも満足しない。
なんでもいいからもっともっと褒めてもらいたい。しばらくして考えて、いろんな人がいろいろと褒めていくのを何回も繰り返し思い出したい。その褒め方が僕達が考えることと当っていても嬉しいし、違う見方でも嬉しい。
それが顔がいいの一様になってしまうのだ。
美人美男は得だと言うが、美人と美男はくっつかない。なんといっても顔以外が注目されないから性格がおろそかになるのかもしれない。
航平の顔はどんなでもかわいいが、とにかくなんでも性格も体もよくなって欲しい。
航平は太ってきた。あごの所は二重顎になって下の方から見れば相当に横柄なやつのようにも見える。顔が良いなんてとんでもない。顔が悪くなっても健康そうなのは実に嬉しい。
規則正しい優等生のようなかわいい赤ちゃんは、徐々に怪獣ギャオスの片鱗を感じさせる。
規則正しくないときがあるのだ。
今もおむつを換えておっぱいをたらふく飲んでげっぷをしたのに寝ないで遊んでまた、泣いておむつを換えて、遊んで、泣いておっぱいを飲む。新しいパターンが出現した。
いろんなケースを経験した人なら何だそれくらい、なんでもないぞ、と思うだろうがこちらとしてはげっぷしたあと寝ないことがもう自分の人生にとってさえ初めての出来事なのだ。
航平にとっても自分にとっても今の毎日は人生生まれて初めての繰り返しなのだ。
そこにいくとチャコちゃんはクールで落ち着いている。何くだらないことに感心してないでさっさとしなしゃんせ、と言った面持ちでせっせとおっぱいをやっている。
航平はいよいよ不規則になってきた。いつ、起き出すか、いつ、寝るのか、どれ位起きているのか全く予断が許さない。
さあ、食事だと言う前に、起きやしないかと予感する時は、ひやひやしながら、なかば息をひそめるようにして食べ始める。
航平の耳は高音を感じ取る。お母さんのかん高い声だけ聞ければいいということだろうか。普通の話し声はほとんど反応しない。テレビの音も平気で寝ている。掃除機を近くで掛けても大丈夫だ。
ところが、ドアをカタリと閉めると寝ていた目を少し開きながらピクッとして両手を瞬間万歳する。
カタッ、万歳である。
ドアの他に万歳をするのは、はさみをテーブルの上に置く音。カタリ、万歳である。他に食事を始めるときにテーブルの上に置く皿の音。テレビも料理番組の中で俳優が使う什器の音には万歳である。
この万歳の後何事もなく過ぎる時は幸せである。その後に往々おしめ替えとおっぱい、げっぷ、おやすみだっこが控えることがある。
久しぶりで床屋に行った。もともと床屋は嫌いだ。アレルギー体質で床屋に行くとちくちくしたりする。かみそりで顔の髭を剃っている最中にくしゃみを出したくなる。髪を切っている時に鼻水がつーと出てくる。目が悪くて眼鏡をはずしているので鼻水が出ているかどうかもわからない。
何時もではないがそういう経験を積むうちに自然遠ざかっている。
ニューヨークにいたとき、モモタローと言う床屋に行った。モモタローはマンハッタンで主に日本人向けの高級美容室だった。高級だから鼻が出てもお互いにペースがゆったりとしていてティッシュペーパーを取って貰うにもそれ程気が退けない。
毎回の指名制とチップ、技術者によって異なる料金とで激しく競争されていることも良く作用して実に快適だった。
料金は日本に比べて十分に理解出来た。
日本に帰ってからあああんな床屋に行きたいと思うのだか全くない。組合制度で均一料金で誰に当るかは分からない。ああ、残念と思っていたところ、なんと、ニューヨークを超える知っている限り世界で一番素晴しい床屋を発見した。
今行っている床屋はそこだ。
こんな床屋は何処にもない。大勢のスタッフが二時間という長い時間を掛けてゆったりといたれりつくせりのサービスと高い技術で料金は同じだ。これはとにかく素晴しい。しかしこんな床屋でもやはり行くのは億劫だ。
一週間が終わる。早くてあっという間だ。十代のころ、一週間というのは長かった。十代は動きが早く落ち着いてはいない。今は、気が付くとぼうっとしている。
下手な考え休むに似たりだ。
時間軸で考えると早い、遅いとなるが、行動量を変数として考えると、自分の行動量は人生の八割方以上来ているのではないか。
そうすると既に自分は70才かもしれない。
航平、次の人生託すぞ。
航平は今日で満四週間になる。無事に何事もなく過ごせてほっとする。無事であることの有難みはすぐには感じないが、何か事故や病気のときは本当に夢であって欲しいと思う。だからきっと今はこの上もない幸せなのだろう。
昼過ぎ、ためしに初めて布おむつをあててみた。それは少しお尻が赤くて痛そうになっていることと、せっかく用意してあるのだから試そうという理由だ。
布はお尻にとって確かに心地よさそうだが、一枚を三つ折にしてあてた所、マットレスまで湿ったうんちが見事にしみでてしまった。大騒ぎで裸にして肌着を替え、バスタオルをはずし、シーツをはずしてマットレスをエアコンの前に置いて乾かした。
その間航平の泣き声はとどろきわたった。すっかり綺麗に取り替えておっぱいを飲んで寝たが、いつもより泣いて疲れた分良く寝ていた。
朝布団干し。このところ晴れている日はたいてい布団を干している。航平のベッドの布団は毎日ほこりをたたく。毎日毎日よくほこりが出てくる。ほこりがたまると自分の鼻もおかしくなる。航平のはなくそはだいぶいいものの完全によくなってはいない。
夜、家族の鼻の具合は悪くなるが、換気が悪いのだと思う。昼は換気が良く夜に比べて具合はいい。自分が過換気症候群であるのかもしれない位換気が気になる。
大体日本の家屋は換気がよかったはずなのに、この湿気の多い地にあって堅固な建築物の換気はすこぶる悪い。フランスでトイレに入るとトイレの外は静かなのに密室の中では外の自動車の音がする。換気口が外まで伸びて空気がたくさん出ていく音がした。ニューヨークのアパートは一ヵ月留守にしても帰ってきたとき部屋の匂いはほとんどなかった。
僕達は外国から文化を入れるが、新聞、テレビ、文化人が言うほどには日本は文化が進んでいないと感じた。実に先進諸国からは相当に遅れていることをそれぞれの土地で感じた時、かつての共産圏諸国のように日本にいてさえ十分に情報を正しく取り入れていなかったと思った。
おばあちゃんが来る。
「風邪をひいてて来るのがのびのびになってしまった」
と言うがすっかり風邪も治って元気だった。「おっぱいの出がいいのは夫を敬っている証だよ」と誉める。
「私なんかはやっぱり心の底では敬ってなかったのか出が悪かったよ。」
僕の母を産んだ時、いつもよく泣くので、ミルクを作って与えたら
「勢いよく飲んで、よっぽどそれまではひもじかったろう」と言う。
帰り際に
「今日はおじいちゃんの命日の三月十五日と同じ十五日だからお経を あげなきゃ」
と言ってひ孫になる航平にばいばいして地下鉄で帰った。
明日は一ヵ月検診の日だ。航平はまだ外に出たことがないのでだっこひもの使い方を練習したりバックの用意をする。大病院の中で待っている時に、泣いたり、おむつをうまく替えられるか。初めての病院通いが待っている。
明日、先生に聞きたいことをまとめてみた。
黄疸はもうすっかり良くなっているでしょうか。
水のようなのも含めてうんちを一日六回位します。大丈夫でしょうか。
おっぱいを飲んだ後に、うんちをしておむつを替えた後、又おっぱいを求めて泣くことがしばしばあります。そのような時おっぱいが出ているのか下痢でつらいのかどうか心配で不安になります。気にする必要はないのでしょ うか。
うんちの回数が多いからか、おしりのあなが赤くなっています。このままでよいでしょうか。
父親はちり、花粉、かびのアレルギー体質で花粉症と喘息です。子供も、はなくそが奥の方にたまって鼻がズコズコと鳴って息苦しそうなときがあります。遺伝していないか心配です。この状況で様子を見ていて良いでしょうか。特別に何かを考えるべきでしょうか。
アレルギーの対策のため母親は玉子をとらないようにしています。それは続けるべきでしょうか。
でべそにならないようにするへその処置はした方が良いでしょうか。
他に何か特別に気を付けることはありますか。
一ヵ月検診。最初は病院までの送り迎えだけのつもりだったが簡単に済みそうなので一緒に付き添った。待合場所に同室だったはるなちゃんがいて懐かしかった。
結果は異常無しだった。体重4450グラム、身長56.2センチ、頭囲38.2センチ。一ヵ月で体重は1410グラム、身長は7センチ、頭囲は3.5センチ増えていた。一日平均45グラムずつ増えている。どおりで太ってきたと感じたはずだ。母乳で育っているからという理由でビタミンKのジュースを航平が飲む。
黄疸は大丈夫。うんちの回数は正常。太っていることから判断しておっぱいは出ているはず。おしりのあなの赤いのは軟膏を処方する。アレルギーの危険性は極めて高い。今取る方策はない。たまごアレルギーではないので母親がたまごを控えるのは疑問。でべその所見は多少ある。処置は不要。これが質問の答えだった。
チャコちゃんは検診後、入院病棟に出かけて婦長さんから
「一ヵ月で1400グラム増やしたら健康一年保証付きよ」
と言われて帰ってからもずっと嬉しそうだった。これから初めて航平と一緒にお風呂に入る。
昨日から航平と風呂に一緒に入っている。今日は二回目だった。
今までのベビーバスに比べるとずっと楽で航平もゆったりとしている。ベビーバスは3分程で一杯になるが大人用のバスだから準備に20分程はかかる。
私は床屋は嫌いだが、実は風呂も嫌いだ。子供の頃から年中小児喘息だったから薬をしょっちゅう服用していた。喘息の薬を飲むと心臓の動悸が早くなって風呂に入るのは苦しいときが多かった。
薬のせいだとは自分も親も子供の頃は分からなかった。誰でも風呂に入るのは多少苦しいと自分では思っていた。親は風呂嫌いの子供と思ってい た。
今は西洋薬を服用していないから動悸はないが習慣で毎日は入らない。どちらかといえばシャワーばかりで風呂にはほとんど入らない。
それが、昨日と今日入って、明日からも毎日風呂に入ることになりそうだ。今は入れないということはない。だから、航平に風呂の習慣を教えて貰うことになって恐れと嬉しさとが共存するような気持ちだ。
損害保険会社から3月22日におこした交通事故の示談書が届いた。
私の過失割合を1割と認定し、損害額の9割を補償するという内容だった。損害額はこちらでの見積りの1割方多く認定されていて、結果修理費のほぼ全額に当るであろう約30万円を保険会社から私に支払うという内容だった。内容に同意し、署名捺印をして返送した。
この車は18年間一度の事故もなく大切に乗ってきた。今もまだ走る。最期の頃に自分の車体を傷付けてお金を得た。
損害保険会社担当者への手紙担当者様
示談書を送付致します。事故による損害は金銭によって十分に償われたとは思ってはいませんが、始めに受けた説明から内容に進展がありこれで十分に満足すべきだと自分では考えています。
運転は事故以来何か不安感もありあまりしていません。自動車はやはりそのままの状態で車庫にあります。この後修理するのか、新車を買うのか、中古車を買うのか、そのまましばらく乗り続けるか、もう乗らないのかは、まだ決めてはいません。
今は子育てに毎日を追われて、おむつを替えたり、お風呂に入れてやったりなどということに楽しみを感じています。
これからも損害保険制度の発展と事故の正しい補償のためご尽力されますようお祈り致します。
4月20日 土 曇り いじめ問題> 今、いじめの問題をNHKで放送している。子供達は生存を賭けて学校に行っているらしい。
二年程前に文部省に電話でパンフレットの内容を問い合わせたことがある。コンピューターソフトの補助金の申請方法が記されていた。申請の上限金額が一件2000万円以内なのか、補助金の該当予定数10件の合計が2000万円以内になるのかを聞きたかった。
パンフレットには申請額上限2000万円、予定件数、十件と書かれていてどちらになるのか、はっきりと分からない文章だった。いずれにしても2000万円というのは大変な金額だ。
聞くと年配の男性の役人は
「パンフレットに書かれているでしょう」
と言う。
「パンフレットに書かれているとおりで、当然一件あたり2000万円に決まっているでしょう。」
と言った。
もう一度パンフレットを見ても決まっているようには見えない。何か吹き出してしまうようだった。
その直後、
「あなたは何処の誰だね。」
と彼は尋ねた。
いつもマックの使い方では名前を聞かれて心地よい。しかし、このときのタイミングと迫力は相当だった。旧帝国軍人の言葉のようだった。
「ところであなたは何処の会社の誰だね。」
「そのパンフレットを何処で手にいれたのかね。」
「説明会には出席したのかね。」
彼は相当に優秀だった。いじめたとは判別のつかない言葉だった。彼の言葉はきっと私の他に先生もいじめただろうと思った。
チャコちゃんのおっぱいはだんだん追われている。航平の飲みっぷりがいいので追いつかない。おっぱいは噴水のように吹き出す程出るがそれと合わせて飲む量も多い。
最近は余っておっぱいを花にまくことはない。搾乳したものを100cc飲ませてもまだ足りなくて泣くときがある。おっぱいのあとすぐにぐずるときは実は足りないのではと不安になる。
今週24日はチャコちゃんの一ヵ月検診の日だ。
「重大事件の裁判のある日だ。大丈夫か。」
と言うと、
「ちょっと行って帰ってくるだけよ。」
と、意にかいさない。
「厚生省管轄の病院だぞ。あぶないかもしれないだろ。」
と言うが、家で航平と二人で待つのもおっぱいを持たない自分としては自信がない。
航平のおむつを私が替えるときわんわんわんわんと泣く。横でおっぱいの準備をしているチャコちゃんが泣き声を聞いておっぱいがポタポタと落ちる。
おむつを替えて軟膏をぬってお尻りを乾かす間ずっと泣き続ける。やっと、永いおむつ替えの時間を終えておっぱいにたどりつく。
ぽたぽたと漏れて顔にもおっぱいをひっかけられて吸い始める。勢い良く吸うがおっぱいが噴水のように出てくるので気管に入ってむせる。むせると息も出来なくなるほどに目を白黒させる。
おっぱいの出がいい。飲みたい気持ちがいっぱいと、与えたいおっぱいがいっぱいで両者がかみあわない。吸い付いては飲めず、泣いては吸い付く。
少し哺乳瓶にとってから与えてみた。
夜、お義父さん来る。仕事を終えて家でほっと一息。
一ヵ月前と比べて航平が太って、大きくなったのでびっくりしていた。
「一ヵ月で背が6センチも増えたら一年で60センチだね。」
とだっこしながら嬉しそうだった。「来週神大寺植物公園に行こうかな、青葉が綺麗だろ。6月の15日から 親戚どおしで青森へ祭を見に行く旅行に誘われたよ。」
と、ひとりになっていても大丈夫だよ、心配するなよ、と言う風だった。
チャコちゃんの一ヵ月検診の日。久しぶりに化粧をしてよそいきの洋服を着て10時前に準備を済ませた。航平と私をおいて
「じゃすぐ帰ってくるからね。」
と言って、病院に向かった。家では航平が途中で泣いて、おむつを替えて、搾乳してあった80CCを飲ませた。しばらく機嫌が良かったが、30分程してまた泣き出した。冷凍してあった120CCをさらに解凍した。暖まるまでの15分間は激し く泣いていた。
それを飲ましている頃
「あら、随分静かね。」
と言いながらチャコちゃんは帰ってきた。先天性代謝異常の検査結果の他、すべてに異常なく今日からは平常通り生活できるという診察だった。
夕方、初めて三人で散歩してみた。ガーデンハイツの横を通って、建物の横にある桜の公園まで行って帰ってきた。
航平はその後は疲れたのか静かによく寝むっている。
コンピューターに関して自分のポリシーは最小価格の最大効用だ。単価当りの効用を最も高くすることを目標にしている。
パソコンの高性能を競うことはない。パソコンの上にはオフコンが控えているのだから。どれだけ安くどれだけ楽しむかを自分は競っている。
今のこの機械は初心者用のものだ。ソフトはほとんどが元々ついていた。マッキントッシュというパソコンは機械もソフトもサポートもうっとりするほど素晴しいと思う。だが、売れないらしい。
広告も多くないし、元々自分達の回りにも使っている人が少ないから売れないのもしかたがないのかなと思う。どうしたって広告やそれが載っている雑誌の記事や大勢の意見に従ってしまうのだなあと思う。
秋葉原でスタンド型の掃除機を買った。途中チャコちゃんに電話をすると
「買って欲しいけれど、どちらでもいいよ。」
と言われて次の機会でいいかなと思いながらパソコン売り場に向かった。掃除機より手頃な商品はパソコン売り場には少ない。掃除をするのに上の階と下の階を重い掃除機を持って上がり下りするチャコちゃんを思い出した。
何か乳飲み子を置いてばくちを打つ父親のような気がして引き返し掃除機を買った。
チャコちゃんの歯が痛くなって歯科医院に行く。疲れが重なって前に直した所が膿んで痛みだした。金属の冠をはずして麻酔注射を打って神経を治療した。
痛み止めを処方され近所の薬局で買うと、
「薬成分は母乳に出るので搾乳後に飲んで下さい。」
という指示だった。鎮痛剤を飲まないでしばらくがんばっていたが夕方になって服用して少し横になっていた。夜になって痛みも止まって元気になった。
チャコちゃん歯痛で鎮痛剤を服用する。しばらく休んだあとふらふらするので熱をはかってみると38度あった。授乳して人工乳の準備をして再び休んだ。
夕方七時頃起きて食事を取るとだいぶ元気を取り戻した。夜になって37度2分に下がった。歯は相変わらず痛くてアイスノンで冷やしている。明日も歯医者は休みでゴールデンウィーク幕開けがうらめしい。
チャコちゃんは歯が痛いので昨日は一人で寝た。僕は搾乳した哺乳瓶と粉ミルクをもって航平と寝た。夜中航平が泣くのに合わせて粉ミルクを初めて与えてみた。
粉ミルクを与える気分というのは何か少し罪悪感がある。驚くほどあっという間に100CCを飲み干した。
昼間も相変わらずチャコちゃんは歯が痛くて鎮痛薬を飲んだ。航平は粉ミルク160CCを与えると飲み干した。鎮痛薬に解熱作用があるのにチャコちゃんの熱はまだ37度2分ある。
歯は痛くてあごは腫れている。顔に白いこうやくを張り付けてしっぷのにおいがする。
チャコちゃんは歯が腫れて顔がホームベースのようになってしまった。
午前中歯医者に電話をして出かけ、メスで切開して膿みを出した。出すときはほっぺたをぎゅうぎゅう押された。この歯は抜いてブリッジにしなければならない可能性があるらしい。
抗生物質と鎮痛剤を服用することになったため航平は粉ミルクになる。午後はベッドで横になる。夜はだいぶ楽になったがほっぺたはふくらんだままだ。心なしか航平もよく泣く。